ホールマークから歴史を読み解く 箱入りヴィクトリア時代のティースプーン 6本セット
商品番号はSS1004、ヴィクトリア時代に作られた、ティースプーン6本組のご紹介です。
こちらの商品。

このセットには、ちょっとだけ不思議な事があります。
それは、作られた年代と、シルバースミス(作り手の銀職人または銀職人たちの会社)の名前が二種類あるのです。

こちらは1850年のホールマーク。
そして

こちらが1892年のホールマークです。
並べてみましょうか。

こうして並べると違いますね。
箱の中、向かって右側の3本は1850年、シルバースミス名はElizabeth Eaton。
向かって左側の3本は上記の三本の製作から42年後の、1892年、そしてシルバースミス名はJohn Aldwinckle & Thomas Slater。
なぜこの42年もの時を隔てた二種類の年代で、更にシルバースミス名も全く違うのか。
疑問に思った私は、この謎を紐解いて行くことに。
ホールマークから伺い知る事が出来るのは、シルバースミス名、レジスターされた都市、そして制作年です。
すると、このElizabeth Eatonというシルバースミスは元々ウィリアム イートン というシルバースミスの未亡人であり、夫亡き後、事業を継いだ事がわかります。
夫であったウィリアム イートン氏が事業を始めたのは1823年、そしてその事業は1844年までの21年間、彼の名義で続きます。
ですが1845年の12月、妻であるエリザベス氏に経営が継がれます。1844年に彼が亡くなったと見ていいでしょう。
その後、エリザベス氏が代表となって経営されていたシルバースミスでしたが、1858年に社名が変わります。
「Elizabeth & John Eaton」
夫のウィリアム氏亡き後、13年間一人で経営してきたエリザベス氏。
息子さんであるジョン氏が加わりました。
よかったねー、よかったねー、シングルマムの子育て報われたね!思わずガッツポーズを取ってしまいました。
ですが。
6年後の1864年、このElizabeth & John Eatonは1840年創業のHenry Holland&sonsというシルバースミスに営業権を獲得されます。
えー。
なぜかしら、きっとジョンさんの娘さんがヘンリーホランド氏の息子さんの一人と結婚したのかしら??
そしてきっとそれを継いだのね!(妄想中)
とハラハラしたのですが、それには理由が。
それはホールマークにあります。
というのも、エリザベスさんの時代から、シルバースミスのホールマークはイニシャルを二つの丸で囲んでいたのですが(夫のウィリアムさんは後期、四つの楕円で囲んでおり、エリザベスさんも最初はこの四つの楕円にしていましたが、すぐにそれを簡易化して二つの丸にしたようです、合理的な人だったと見た)、このヘンリーホランド氏のホールマークも、1859年からは二つの丸で囲まれているのです。
うーん、これは。
ジョンさんの娘さんがホランド氏の息子さんと結婚し「じゃあこりゃ合併だねえ」と相成ったとしか思えません。
そうかー、ハッピーエンドだわー、と思ったのもつかの間。
このヘンリー ホランド&サンズのシルバースミス名が、後に変わったことに気づきます。
その名もHenry Holland (of Holland, Aldwinckle & Slater)。
え。
えええ。
なんだか見覚えが。
JA/TSというのはシルバースミスの名前で、これは
John Aldwinckle & Thomas Slater
なんですね。
しかも、シルバースミスを示すホールマークが四つの丸で囲まれている。
これはー!
ウィリアムさんとエリザベスさんの息子さんだったジョンさんの娘と、ヘンリー ホランドさんの息子たちの一人が結婚し、そしてそのまた娘たちと夫たちが継いだのかしら?!
なんだか家系図が書けそうな雰囲気になってきました〜!妄想家系図〜!
ですが、というわけで(?)、この42年もの年月を隔てたスプーンたちは、結局は同族経営の同じ会社で作られた物として見て良い気がします。
多分、エリザベス イートンの銀職人の一人が作ったスプーンが、営業権譲渡と共にHenry Holland & Sons へ渡り、さらにはそこからJohn Aldwinckle & Thomas Slaterへと受け継がれ、オリジナルと同じ物を作った職人さんが少しだけ改良を加えて新しい(と言っても1892年)物を作り出し、6本セットにしてお客様のモノグラム(イニシャル)を彫り入れてお渡しした・・・。
と見て、まず間違いないと思います。
アンティークはその裏にあるストーリーを読み解くのが楽しいのですが、普段はこんなに綺麗に流れがわかるストーリーになりません。100年以上経っていますしね。
その意味で、このスプーンたちは例外的にストーリーが詰まった逸品と言えましょう。
見目麗しく、そしてストーリー性に溢れた19世紀の銀職人たちの息吹が聞こえて来る様なこのセットの商品ページはこちらです。
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